河野 理愛 氏
コグニティ株式会社 代表取締役
人生でもビジネスでも、経験の全てが糧になる
営業や面接の会話内容をAI(人工知能)で分析し、改善点を提示するサービスを提供するコグニティの河野さん。14歳でビジネスをスタートして以降、常に前に進み続ける河野さんに、起業やビジネスに対する価値観を伺いました。
インターネット黎明期の学生時代の挑戦
私がビジネスとはじめて向き合ったのは14歳のころ。どんなに頑張ってもスポーツが苦手だった私は、その解決策を本に求める中で「スポーツ科学」という分野に出会いました。体の動かし方を論理的に学ぶと、できることがどんどん増えていく。自分が不得意なことも可能にしてくれた科学と技術の力に、次第に魅了されていきました。
ですが当時はインターネットの黎明期で、本から集めた知識も限られていて。そこで「集めた情報をもっと多くの人に公開して、もっとたくさん人に話を聞きたい」と思い立ち、自分からネットで情報を発信するようになりました。
するとプロのスポーツ選手からもアクセスや相談が集まるようになって、ネットの可能性をすごく感じたんですね。それから色々な方が意見や情報を交換できるインターネット掲示板を作成し、学会に登壇する機会にも恵まれました。
働きながら学べる大学を探して慶應義塾大学に進学しました。
その後サービスを本格的にマッチングビジネスへと転換させたのが、大学在学中の19歳の頃でした。年間で400人ほどのマッチングに成功したものの、そこからの道は本当に大変で。何より辛かったのは「スポーツではご飯が食べられない」と言われるくらい、当時は業界全体でお金がまわっていなかったんです。限界を感じた私はビジネスでお金を回して世の中を良くするというアプローチを学ぶため、立ち上げた会社を譲渡して大学卒業後はソニーに就職しました。
ビジネスの基礎を身につけた20代
ソニーには7年ほど勤務し、市場分析や戦略立案といった企業の基礎と根幹の部分を学ぶことができました。ですが2011年の東日本大震災を機に、私の考え方もがらっと変わっていきました。
当時は家電の売上が落ち込み始め、社内でも人員削減が相次いでいたんですね。「このまま縮小する業界で、残りの20代を過ごしていいのだろうか」。そう自分に問いかけて退職を決意し、転職活動を通じて出会ったメガベンチャーに転職することにしました。
ですが結果的に、その会社は1年ほどで辞めることになりました。その後は最大1年間と期限を決めて、イギリスやアメリカでビジネスについて勉強。現地で色々な方に出会えたことがきっかけで、今の事業の種が生まれることになりました。
思い込みのない、公正な社会をつくりたい
私が10代の頃から色々な経験ができたのは「10代だからできるはずがない」といった思い込みをもたずに、当時の私に色々な機会を与えてくれた人々や環境のおかげだと感じています。この経験が原体験となって、「人がもつ先入観を技術の力で取り払い、選択肢を広げる仕事がしたい」と考え、2013年に今の会社を設立しました。これまであまり解明されてこなかったコミュニケーションの内容を可視化して、データを基に正確な判断ができるようなツールを作っています。
学生時代に起業した会社はすでに譲渡しましたし、20代で転職した会社も1年足らずで退職した経験は、人によっては「失敗」と捉えるかもしれません。ですが私にとって一番大事なのは「お金を回してビジネスを構築する術を学ぶこと」と、「人間の思考やコミュニケーションをもっと見える化する」ということ。その目標に向けてあれこれと行動するなかで、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともありますが、その全てが今のビジネスに生きていると確信しています。
これからの不透明な時代では、これまでのルールや常識もきっとどんどん変わっていくでしょう。ですので、私たちはこれからも、様々なサービスを通して思い込みやバイアスのない公正な社会を作っていきたいと考えています。
高校時代のわたし
本を読んだり絵を描いたりすることが好きでした。今でも時間がある時は絵を描くこともあります。中学時代はスポーツの分析をするために陸上部に所属して、選手の走り方などを研究していましたね。
プロフィール
コグニティ株式会社
代表取締役 河野 理愛 氏
1982年徳島県生まれ、慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立、代表として経営を行う。2005年にソニー株式会社入社。カメラ事業を中心に経営戦略や商品企画に携わる。2011年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。2013年コグニティ株式会社を設立。